皆さんは亡くなった方のうち、どのくらいの方が相続税の課税対象になっているかご存じですか?
先日、国税庁より平成30年分の相続税に関する資料が公表されました。
これによると、令和元年10月31日までの1年間に亡くなった方は約1,362千人で、このうち申告書を提出して、相続税課税対象となった被相続人は116,341人。
即ち、約8.5%だそうです。尤もこれは全国平均ですので、例えば東京都港区などに限ると、国税庁の資料には載っていませんが、50%になるとも言われています。
課税対象被相続人の割合は、平成26年までは概ね4%強でしたが、27年には8.0%となり、平成29年は8.3%とほぼ2倍になっています。
これはご推察の通り、平成27年1月以降の相続については、基礎控除が5,000万円+相続人一人当たり1,000万円から、それぞれ3,000万円+600万円と6割に削減されたためです。
相続税の平成30事務年度の実地調査件数は12,463件。これは主に平成28年に発生した相続が対象ですが、相続税申告書を提出した人の約1割が税務調査を受けたことになります。
そして、税務調査を受けた件数のなんと85.7%で、何らかの申告漏れが見つかり、更にそのうち16.5%では重加算税が課せられて、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は2,838万円で、平均追徴税額は568万円となっています。
一方、国税庁では、「申告納税制度の下で自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の税に対する公平感を著しく損なう」ので、無申告事案の把握を積極的に進めて調査を行うとしており、平成30事務年度も1,380件の調査を実施していますが、そこでの申告漏れ指摘件数は、なんと89.3%、1件当たりの申告漏れ課税価格は8,320万円、追徴税額は731万円とのこと。
また、相続税の補完税としての贈与税についても、無申告事案を中心に3,732件の実地調査
を行い、そこでの申告漏れ件数は、95.1%、平均申告漏れ課税価格は555万円、追徴税額は181万円となっています。
相続税にしても贈与税にしても実地調査の割合は、相対的には決して高いとは言えませんが、調査に入った場合には非常に高い割合で申告漏れが指摘されており、逆に言えば、国税庁には “ほぼお見通し” のようです。
申告漏れは、意識的ではなくても、知らないことにより起こしてしまうことも多いと思われます。日常的に税に対する意識を高め、正しい知識に基づいた節税に努めたいものです。
円満相続先導士 高橋一夫